ロンドンの、船上の鍼灸師の日記

2012年から客船で鍼師として働いていましたが、2017年からロンドンで治療家として働いています。治療のこと、クルーズのこと。色々綴っていこうと思います。ウェブサイトはこちら。https://www.junjapaneseacupunctureandshiatsuclinic.com/

燃えついた畑に作物が出来るんだ(燃え尽き症候群について)その2

前回の続きは

燃え尽いた畑には新しい作物ができるはず(燃え尽き症候群について) - ロンドンの、船上の鍼灸師の日記 から。

燃え尽き症候群の考察についての続きです。

 

日本で縁あって臨床30年の先生を施術させてもらっていた時に、臨床して何年目だと聞かれて10年目だと答えた時に羨ましいと言われました。

自分の30年を振り返って臨床10年目ぐらいが一番勉強していたし新しい技も増えて充実していたと懐かしそうに仰っていました。今はあれほどの情熱はないそうです…


そう思うとやる気や目標というのは自分の意識次第であって、自分が選んだ職業や武器なんて関係なく、ただただ人生の双六において自分がどういう時にどういうキャリアを選んでどうもがくことになっただけのことなのかもしれません。


そういう経験をすることは自分の人生にとって意味があるからだという人がいるけど、個人的にその見方はとても嫌いです。それは自分の経験をいいように消化できた勝者の意見のような気がしてならないからです。

例えば、DVを受けて育った子供はDVを受ける意味があったって本人がその経験を振り返ってなら言えますが、他人がそう言える資格なんて全くないと思うんです。

DVを受けたことに意味があるなんてあまりにも残酷じゃないですか?


Aさんが過去にもう味わえないような仕事を達成したことに意味もないし、燃え尽き症候群を味わって苦しんでいることにも意味なんてない。

意味はない、けど、でも、意味を見出して欲しいなと勝手に思ったりもしてるのが人間のさがだなと思ってしまいます…

僕が今ロンドンで鍼灸師として働いているのは、以前のブログでも書いたように仕事で鬱のような症状に苦しんだからです。あそこまで苦しくなければきっと会社を辞める決断ができてないなぁと思います。親にも反対されたし、残業代だってきっちり出てたし…

 


Aさんには子供がいませんが、子供がいる方を羨ましいと言います。

「子供という存在のせいで自分の人生を犠牲に出来る(→自分の人生を生かす、人生の目的ができる)ことができる」からというようなことを言っておられました。

僕は36で子供を授かったが、Aさんの言っておられることはわかります。

先日も娘の体調が悪くなり救急病棟へ夜中に連れて行きました。それはとてもしんどいことですが、自分が責任を持った時間(=充実感がある)とも言えます。


結婚をしたかしないか、子供を持つか持たないか、ペットを持つか持たないか、同性が好きか異性が好きかなどなど。

それぞれどういう選択をしたか、自分がどういう出自を持つかで、その人の価値観は変わってきます。けど、その価値観をぶつけ合うことに意味なんてありません。

その個々人の価値観を完全にわかることなんていう、たいそれたは無理なんじゃないかと思うからです。

 

Aさんが今からどういう選択をするのかはわかりません。

でも、自分の人生が今つまらないし充実していないとしても、僕の経験から1つ言えることがあります。

それは「身体が元気な限り、気持ち、やる気を満たすことはできるんじゃないか」ということです。

 

クルーズ船で働いていた時に元メジャーリーガーという人を診せてもらったことがありました。

抑えの投手として成功を納めリーグ優勝も経験したという人で、阪神タイガースから来ないかという声もかかったと言っていました。

今は引退して保険会社を運営していましたが、その方の身体は40代にも関わらず、身体を触った感触(皮膚の組織とか皮膚の充実度など)が僕の身体のデータベースでは70代に近かったのをよく覚えています。

その方は数度しか船で診ることはありませんでしたが、お話しする中で燃え尽き症候群のような話にはなりませんでした。

「チームがピンチの時に俺がマウンドに上がって、チームを勝利に導いた時の興奮というのは本当にたまらない。アドレナリンの量も半端じゃないんだよ。マウンドから戻る時に女の子の濡れたパンティが降ってきた」と彼は言っていました。(本当の話です)


その方の治療経験を通して、象でもネズミでも心臓の拍動数が同じように、人間が生涯で使えるエネルギーの量って決まってるんじゃないかと考えてるようになりました。その方は通常なら70代までに使うエネルギーを40代までに使ってしまったからこそ、70代のような身体の感触がしたと思うんです。


偶然かもしれないけど、燃え尽き症候群の話をしなかったのは文字通りその人が燃え尽きてしまったからで(矢吹丈の最後ですね)、燃え尽き症候群とはまだエネルギーが余っているからこそ、自分の気持ちとの乖離を感じて無気力となっているのかもしれません。

 


身体にエネルギーが蓄積している限り、気持ちは切り替えられる。

そう信じていたいです。

季節的には夏なのにもはや気温は秋なロンドンでの、ある日に思った出来事でした。

 

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パタゴニアの夕陽。アルゼンチンの最南端だって陽は出て沈みます。

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パナマ運河。これを人の手で作ったんだと思うと敬服するばかり。

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パナマ運河。これを人の手で作ったんだと思うと敬服するばかり。

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パナマ運河。これを人の手で作ったんだと思うと敬服するばかり。

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パナマ運河。これを人の手で作ったんだと思うと敬服するばかり。







燃え尽いた畑には新しい作物ができるんだ(燃え尽き症候群について)

とある患者さん(Aさんとする)の話。

 


その方は仕事、なんなら人生に対してしばらく意欲が湧いていないと言っておられた。コロナが拍車をかけているのかもしれないが、それはわかりません。

 


治療の間にその方の歩みを聞きましたが自分の中でこれ以上はないというほどの仕事を以前に成し遂げ(チームも一体感があってすごく全体がノっていたそうです)、それに付随する達成感を得ることも含めあんなにエキサイティングなことは今後の人生でないんだろうなということを言っておられました。その思いが人生に対する意欲の低下に繋がっているそうです。

 


仕事柄、色々な方の人生の断片を聞いてきました。

船で出会ったある患者さんはオリンピックメダリストのコーチをやっておられた方で、そのメダリストはオリンピック後に目標がなくなってしまい鬱になってしまったそうです。

4年に1度のためにやってきたことが、ホイッスルが鳴ったかと思うと一瞬で終っている。選手として次また選ばれるかもわからないけど、4年後のために準備する。

アスリートの心情を思えばそうなってしまうのかなぁとついつい想像してしまいます。

 


「違う楽しみを見つければいいんじゃない?」と人はアドバイスするかもしれませんが、それは真剣に野球選手を目指している子供に、野球以外のスポーツを勧めるぐらい残酷なことかなと思ってしまいます。

人間が自分の人生の中で選択できる武器、強みって限られてると思いますし、人は自分の人生を肯定していく(していかないと生きていけない)生き物だと個人的に思ってます。だからこそ、自己肯定していくために自分の武器をどんどん研ぎ澄ませていきます。

一度自分の武器を使って達成した山から、違う武器を持って別の山を登れる人ってごく一部です。自分の武器で似たような山を登れる人もいるけど、名選手が名監督にはならないようにそれも中々難しい話です。

 


過去のものが捨てられない人がいますが、それはその思い出や自分が捨てられないわけで、それは昔の自分が今も輝いていて眩しいのかもしれません。退職した会社の資料とか今後使わない気もするけど捨てられない人がいると聞きます。

 


話がずれました。

 


別の患者さんで器械体操をしてた方がいて、10歳にも満たない年齢で「あなたは今後体操を続けても選手にはなれない」とはっきり言われたそうだ。

「今振り返るとそれは優しさだったんだと思えるけれど、言われた時は全く理解できなくてしばらく続けた」と仰っていた。

でも、プロでやってきた人(Aさんだって自分の仕事の分野に対するプロだ)が自分で選んだ人生の選択肢で実際に「勝ち」をもぎ取り、それ以上の「勝ち」やそれに付随する充実は今後の人生せ得られないんだろうなと思う時、そこに吹く心の空っ風はいかばかりのものなんだろうなと(上から目線ではなく)憐れに感じてしまいました。

 


イギリスにそういう雑誌があるのかはわかりませんが、日本で違和感を覚えていたことの1つに「世代を絞った雑誌」があります。

「40代から輝く」とか「50代でも若々しく」などのテーマを掲げて女性誌(最近は男性誌でも増えてきてるか?)は10年刻みでライフスタイルや価値観を提唱していて、こんなのがどうしてあるのかなと思っていました。

それはもしかしたらAさんのように不意にぽっかり穴が開いてしまった人の人生をポジティブに駆り立てるためにあるのかもしれないなと少し納得できました。

 

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40代

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50代


こっちにそういう雑誌がないのならそういう需要がないからですし、そんな価値観を世間から押し付けられたくない人が多いのかもしれません。

逆にいうと日本ではそういった提案に需要あるから雑誌があるわけで、提案を受けたい受け身な人が多いのかもしれません。

 


僕はセラピストという自分的にはとても面白い仕事に偶然出会えたことは人生最大の幸運だったと思うし、自分が腐らない限り一生更新できる仕事を選びました。

実際、一生完成しないジグソーパズルをしていたり、「完璧な」身体を求めて鍼と手で彫刻作品を作っていたりするような感覚に実際に何度も襲われます。

 

 

書き足りないことがまだまだパズルのピースのように浮かんできます。

まとめきれてないのでとりあえずこの辺で続きは次回にしようと思います。

続きはこちら

 

 

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60代

 

呼吸解放の醍醐味は考えないでいられること

お題「リラックス法」

 

子供が保育園に行き始めることになり、少し余裕が出てきたのでブログを少しずつ始めたいなと思います。

というか、文章を書きたいという欲が出てきました。

 

先日、親の看病で日本にしばらく戻っておられた患者さんが、逆に参ってしまい、一時休養ということでイギリスに戻ってこられました。

こちらに来て20年以上になり、気丈で様々な社会活動にも積極的に関わってこられた方だったので、来院された時の衰弱ぶりに驚いてしまいました。

 

治療中に色々とお話しする中で私が気づいたのが、「この方は起きている問題に対して、原因を見つけ解決しようとしてしまう」方だということです。

親の看病に際して何もできない自分であったり、20年以上日本を離れて自分のコミュニティが日本になくなってしまっている状況はその方を余計に孤独にさせてしまったのではないかと推察します。

 

私は現在38歳ですが、歳を重ねたり、患者さんの取り巻く様々な環境について聞くたびに、「難しいなぁ」と感じたり考えたり回答したりすることが増えました。

それが意味することは、「いかに自分が動いたり解決しようとしたりしてもどうにもならないことがある」ことで、いい意味でも悪い意味でもなく諦めていくことを学んでいく、学んでいかなければならないということではないかと思うんです。

そしてそれは、歳を経るごとに直面することが増えて行く気がしています。(若い頃は何にでもなれる気がしてたのに笑)

 

その方と話しててハッと悟ったのが、私の設定している「呼吸解放コース」はこういう方にオススメなんだということです。

呼吸は自意識と無意識が交差する、おそらく唯一の運動です。

自分で呼吸は意識して操作できますが、緊張すると勝手に呼吸が浅くなるなど、自分では操作できないもの(自律神経など)でもコントロールされています。

 

考える癖がある人は、その逆で「考えるないでいる」状態にも慣れないと脳と身体ががパンクしてしまいます。加齢とともにその余裕は無くなっていくばかりです。

人間は「動物とコンピューター」の間にある生き物で「強制終了できないコンピューター」だと思っています。眠ることが強制終了だとは思いますが、それだって、精神状態によって終了できなくなってしまいます。

鍼や手技で呼吸を深く穏やかにしていくことで「考えない」ことを身体に染み込ませていかないと、自分では解決できない状況に直面した時に、答えを出せない自分を責めてしまいます。

 

カウンセリングなどで考え方を変えることができれば、その状況を解決できる糸口が見つかるかもしれません。

その一方で「考えないようにする」のも1つの手です。一時的かもしれませんが、その一時的な行為でも脳をすごくリラックスできます。そしてそれはカウンセリングを通してではできないことなのではないでしょうか。

なぜならカウンセリングには対話が必要だからです。施術は身体を相手にするので言葉は要りません。

私が鬱だった時に鍼で救われた時も、しばらく何も考えないでいられたからなんだとこれを書いていて気づきました。

 

考えてにっちもさっちのいかなくなってしまっている方がおられたら、ぜひ一度、呼吸を解放してあげましょう。

僕も受けたいな…

 

*徒手療法を生業としていて、目の前の人にどうしようもできなかったことは、数え切れないぐらいありました。

それでもなお、どうにかよくできないかなぁとあがいているという意味で、一番諦めが悪いのが臨床の現場にいる人です笑

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呼吸といえば、僕にとってスカイダイブです@アルバ(カリブの島国)

 

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初めてのスカイダイブ@アルバ(カリブの島)



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もうすぐ地上

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着きました。

 

子供がいると…

しばらくブログを書いていませんでしたというか、書けない日々が続いています。

 

前回書いたのが12月18日で3ヶ月ぐらい経つわけですが、何があったのかというと、イギリスのロックダウンです。

ロックダウン中ってやることがないのではと思われるかもしれません。

ところが、今月で19ヶ月を迎える娘といると、正直、それどころではありません…

 

文章(ツイッターなど短い文章のものであればかけますが、ブログのような長い文章になると時間が取れない)をアップする時間があるなら娘をみないといけないということで、仕事以外は妻と分担しながら子守の3ヶ月でした。

「自分が何かをしたい」ということが可能であった子供が出来るまでの時間の使い方から、「子供のために時間を割く」という受身の時間の流れ方には未だに夫婦共なれず、子守を押し付け合いをしてしまい口論になることはしばしばです…

 

今またどちらが子供を外に連れ出すかでやや口論に。

 

子供を育てるってのは大変だ。いつまでたっても飽きないブランコに今から乗せてきます…

 

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炎症に対して徒手療法は何が出来て何ができないんだろう

長年頻発している膀胱炎が抗生剤を使わずによくなった症例がありました。

炎症って手技で止められるのか。そんな疑問が湧いて書き始めました。


40代女性会社員

主訴:寒い時期になると酒さが出る。また、左腕がだるくなる

*酒さ:顔面紅潮,毛細血管拡張,紅斑,丘疹,および膿疱と重症例でみられる鼻瘤を特徴とする慢性炎症性疾患

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/14-皮膚疾患/ざ瘡および関連疾患/酒さ


所見

左の上腹部がとても張っており、消化器系のトラブル(特に胃)が左腕の血流低下を引き起こし、だるさに繋がっているのではないかと推測。また、下腹部を触ったところ独特のしこり、強張りがあり(感覚的なものなので言葉にしずらいです)膀胱炎を患われたことがあるかを確認したところ、若い時から頻繁にあり今も膀胱の調子が悪いという回答がある。

抗生剤を飲むことからそれが胃の環境を悪化させ、胃の機能が落ちることで左上腹部の張りに繋がり、左腕のだるさに繋がったのではないだろうか。

上記の状況を考慮し、上腹部の張りを改善させていくことを治療の軸とした。


施術内容

マニュピレーション: 胃及び膀胱のマッサージ

使用穴:合谷、四瀆、上巨虚、陰谷、曲泉など


治療前は左腕にハリツヤがなかったが、治療後はそれが改善していた。また胃と横隔膜との間に隙間がなく張り付いていたのが、柔軟性が出ていたので終了。


2回目(1週間後)

腕のだるさと酒さは改善しており喜んでおられたが、それ以上に膀胱炎が抗生剤を使わずに済みそうだというぐらい下腹部の調子がいいそうで、喜んでいただく。

詳しく話を伺ってみると、尿に血が混じることも頻繁にあるそうでそれが改善傾向にあるとのこと。(さらっと言っておられたことからも、膀胱炎が日常茶飯事であることがわかる)


施術内容

マニュピレーション:下腹部は柔軟性が出ていたのでより深い層を狙っていった。また、直接は関係しないが間接的効果を考えて生殖器へ栄養する陰部大腿神経へもアプローチ。

使用穴:基本同じ。


3ー4回目:基本同上

以上。

 


考察

元々の主訴である酒さと腕のダルさもさることながら、昔からのものなので改善すると(恐らく)諦めていた膀胱炎とが両方よくなり、満足されておられるようで良かった。

この両者の共通点は「炎症」である。

つまり、炎症が身体に起きている反応という意味では酒さも膀胱炎も同じで、根っこにある炎症の改善を目指せば両方よくなるのは当たり前と言えば当たり前だなと思った。

 


一方で炎症というのがこんなに簡単によくなるのかという疑問も湧いた。

膀胱炎を調べたところ、急性膀胱炎は主に大腸菌からなり、抗生剤を用いて治す。でも膀胱炎の全てが菌によるものから来るわけではなく、例えば機能的な原因による膀胱炎(もしくは膀胱炎のような症状と感じられるもの)もあり、それは徒手療法で改善させられるんだなと思った。

 


膀胱炎の機能的症状ってなんだろうと思い、調べてみた。

頻尿:1時間~2時間ごとの排尿。多い患者は1日30回以上トイレに行く。
残尿感:排尿直後に尿を出したりない感じに囚われる。
尿意頻拍:尿は出ないと理解しているが、常に尿意が襲う。
排尿痛:排尿の終末時・直後に尿道から奥にかけて痛みが走る。
下腹部痛:恥骨部を中心として重い痛みや激痛が走る。
外陰部痛:陰部から肛門にかけて重い痛みやキリでえぐるような痛みが走る。
腰痛・背部痛:腰から背部にかけて重い痛みがある。
下肢の不快感:大腿部(太もも)の内側や足の裏に痛みやしびれ感がある。
尿失禁  など

 

参照

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/急性膀胱炎

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/非細菌性慢性膀胱炎

(慢性膀胱炎のみの記載は見つからず)

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/神経因性膀胱

 

機能的な膀胱炎が起きる原因は、ウィキペディアに膀胱を支配する脊髄中枢(胸椎10番~仙骨4番)の過敏さだとありました。過敏になってしまう原因の具体例としては


1)細菌性膀胱炎に頻繁になることで膀胱を支配する神経が過敏に反応してしまうようになる。

2)膀胱炎の炎症による癒着、虫垂炎など手術による癒着、出産などによる癒着で膀胱へ繋がっている神経が圧迫などを起こすことで活動が過剰低下/興奮

3)自律神経の乱れが膀胱へ繋がる運動/知覚神経にも影響を及ぼし過剰低下/興奮に繋がる


などを思いつきます。(読まれた方で他にも原因を思いつかれる方は教えていただければ嬉しいです)

原因の1ー3によって、症状の1ー9が起きることになります。

この患者さんのポイントは「炎症」だと書きました。ウィキペディアの情報に列挙された症状だけを信じれば、炎症は細菌が起こしたものであり、神経の機能不全によって生じることはない。もちろんそうだと思いますし、血尿が症状に記載されていないのもそのせいでしょう。(炎症の結果として血尿が起きるため)

ただ、神経の機能不全によって炎症が起きやすくなるとは言えそうです(例:排尿をコントロールする運動神経が弱くなることで実際に尿道に尿が残り、菌に感染しやすくなる)。

そしてその炎症が血尿を起こすのであれば、膀胱に繋がる機能不全を治すことで血尿を改善させることもできることになります。

若い頃から膀胱炎を繰り返す人は、細菌性によるものと機能不全によるものとが混在しているというのが本当のところなんだろうなと個人的には思います。

この方の場合、酒さも炎症が原因で起きる症状ですが、それが改善したことから全身の炎症を引き起こしていた要因の中で神経の機能不全の側面が強い症例だったんだなと考えます。


癒着を外からの手技で本当に引き剥がすことができるのか。それは正直わかりません。でも、癒着によって巻き込まれた腹膜を剥がして剥がされた周囲の組織に栄養を行き渡らせられることはできるんじゃないかなとは、以前鶏を絞めて解剖した時に生に近い筋膜を見た経験から言えます。

*参考ブログ

https://acupuncturistontheship.hatenablog.com/entry/2018/07/27/135256

https://acupuncturistontheship.hatenablog.com/entry/2018/08/06/134201

 

 

大腸菌を即座に退散!させることは閻魔大王でもないし私にはできませんが笑、機能的な損傷なら改善させることで様々な症状に対応できるんじゃないかなと改めて考えました。

まら、抗生剤と徒手療法とを組み合わせることで繰り返してしまう膀胱炎ももしかしたら止められることができるのかもしれないと思います。

 


薬や手術を用いずに何ができて何が出来ないのか。

冷静に考えて治療できる人間になりたいです。

 

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小便小僧は膀胱炎になるのかな@ベルギー

 

#膀胱炎 #炎症 #鍼灸 #酒さ

バレエダンサーの足首の痛みはどこから?喉から?鼻から?いや、腰と胃からだ。

以前書いたむくみで悩んでいた方とは別の患者さんですが、ロックダウン中で少し余裕があるうちに症例を書いておきます。

 

10代女性  学生主訴: 左足首の痛み

 

症状:

バレエスクールに通う女性で1ヶ月ほど前に左足首を捻挫。足の指を内に入れる動作と外に向ける動作で痛みが出る。

痛みが出る動作をしてもらったところ、腰で本来支えなければならない体重が身体をうまく使えていないために足首に負荷がかかりすぎていることがわかる。腰をうまく使えていない要因は消化器系のトラブル(慢性胃炎)からも来ていることがわかった。

 

治療内容:
腰をうまく使えるようにするために太ももを、また胃炎に対しても手と下肢に鍼と手技でアプローチをしたところ、痛みが消失。

使用穴:  合谷、殷門、陰陵泉 など


明日からもBalletができると、満足して帰られました。

このように思わぬところに痛みの原因が潜んでいることがあり、それを除くと痛みがすぐに消失することもあります。

 

感想:

腰がうまく使えなくなると色々なところに影響が及んできます。それは膝だったり足首だったり。

でもその一方で、腰と胃の関係も気になります。

足首がよくなってからきていませんが、胃の調子が悪くなると腰に影響が及んで足首への負荷がかかりすぎる事になりはしないか。

 

そのあたりは今後の課題でもあります。

 

#バレエ # 鍼灸 #足首の痛み

 

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リアリズムはリアリティから生じる。じゃあ治療というリアリティは?

蛤御門のヘンという角田龍平さんがパーソナリティをつとめるラジオで塩田武士さん(罪の声という小説が代表作)がゲストで出演されていて、平成天皇肖像画を描かれた野田弘志さんの言葉を引用していました。(ラジオはポッドキャストで聞けます)

 

それが「リアリズムはリアリティから生まれる」という言葉です。


https://art-culture.world/articles/portrait-painting-of-their-majesties-the-emperor-and-empress-of-japan/


https://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/hen/2020/10/hen_106180.htm


人の身体の治療法はごまんと存在し、また、そこに解答は今のところありません。(=解答がもし仮にあれば、それが流通している)

施術する人によって身体の見立ては違い、施術する人のフィルターを通して患者さんの症状と向き合うわけです。


私は施術する時に「自分の中のリアリズム(=自分の考え方)からリアリティ(=患者さんの症状への解決策)を模索していないか?」

といつも自分に問いかけます。

なぜなら、「リアリティはリアリズムの中にはない」し(事実は小説より奇なりと同義とも言えるか)、「リアリティはより細かいリアリティの中にある」と考えているからです。いくつもの腰痛のパターンから動きや癖などを通して、どのパターンに当てはまるかを絞っていきツボを選んだり施術方法を選んだりする。


その意味で、一つ一つのツボにどういう身体の変化があるかを地道に研究されてきた整動鍼があっているなと改めて思いました。

その一方で知り合いの先生から教えてもらったセミナーや私の先生の教えを通して「患部」に対しても最近考えます。

 

遠隔で患部が緩んだとしてもきっちり取りきれてないケースってあるんじゃないのかなということです。

遠隔で緩めて、患部もきっちり緩めることって案外大切なんじゃないのかなと。


「どれが絶対に正しい」ではなく、常に遊びを持ちながらいい意味でのいいとこ取りをしていきたいなと改めて思います。

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最近読んだ「医道の日本」から。頭には2つの凹みがある。という観察は改めて触れるとそうだなと納得。

東洋医学ってリアリティの中にリアリティを求めた医学なんだと思うんですが、リアリティが先行し過ぎてるところもあるんじゃないかなと考えるところもあります。

特に脈と舌の診断はどこまでがリアリティでどこまでがリアリズムなのか。

元々リアリティから生じていても、リアリズムに気化してる側面もあるんじゃないのかな。

なんて思ったりします。