ロンドンの、船上の鍼灸師の日記

2012年から客船で鍼師として働いていましたが、2017年からロンドンで治療家として働いています。治療のこと、クルーズのこと。色々綴っていこうと思います。ウェブサイトはこちら。https://www.junjapaneseacupunctureandshiatsuclinic.com/

技術を正確に学ぶために

末梢神経を緩めていく時に、A先生は体幹に近いところから緩めいくべきだといい、B先生は手足に近いところから緩めていくべきだと言う。2人ともすごく勉強をなさっておられて、セミナーもやっておられるような、著名な先生だ。

どっちが正しいのか。どっちも正しいのか。


A先生が末梢ないし遠隔を意識して施術するのは、遠隔部が慢性化していて軸ずれを起こすことで、主訴の症状を訴えている場合。

神経とは関係ない例を出すが、鎖骨が骨折などで癒着することで肩甲上腕関節の屈曲の動きがスムーズにならず肘や手首の関節に過負荷が生じて痛みが起きた場合、肘や手首ではなく鎖骨にアプローチをする。

ただ、A先生は基本的に患部をまずアプローチして、そこがダメなら隣接関節、遠隔と徐々に範囲を拡大してアプローチしていく。


一方、B先生はまず表面に現れる末梢神経や末梢血管を遠隔からアプローチしていき、体幹へ収束していくやり方を取る。

関節や筋肉は神経で栄養されているため、末梢神経をアプローチすることで栄養障害が起きている関節・筋肉は(完璧ではないが)機能が戻る。

それを行ったのち、それでも取りきれない関節や筋肉にアプローチをかけていく。

例えば手首に問題があった場合、手首の筋肉を栄養している血管や神経をマニュピレーションして栄養状態をよくし、それでも残っている筋肉の硬結をほぐしたり、関節ならアジャストしたりして問題を解決させる。

(手首の筋肉がほぐれていても、まだ問題があれば、どの関節に問題があるかを把握してA先生のように鎖骨へアプローチをかけることはあるだろう)

どちらもアプローチとして正しいように思うし、最終的に問題に対してアプローチする場所は同じになっていく気がしている。


どうしてこの差を生んだのかといえば、A先生が理学療法士(PT)でB先生は柔整師、鍼灸師だと言うことだと考えている。

前者がPTで保険診療の時間内に対して、後者は実費メインなので保険診療よりも時間をかけられるし、実費の場合、保険診療よりもより明確に効果を実感してもらわないといけない。

その差がこれのアプローチの差を生んだように考えているが実際はわからない。

僕としては、患者さんの症状に対して、どちらのアプローチでより効果が出るのかを見極めてやっていくほかないと思っている。


とはいえ、ウェブ会員になっている園部俊晴先生の臨床講座の中で、「どの組織が問題となっているかが分かることが一番重要で、そのあとどうアプローチするかは人それぞれ」と確か仰っておられた。

確かに、何が問題かがセラピストで共有できれば、治療の考え方が違っていても共通で効いたかどうかが判断しやすい。

「治療技術より評価技術の方が圧倒的に重要だ。」とも言っておられたが、評価がきっちり定まる=どの組織が問題となっているかがわかることだ。

 


でも一方で、治療技術が技術として成り立つ理由を深く考えていくことも評価技術が上がると考えている。

どういう時にその技術を用いる→評価技術にもなるからだ。そうぐるぐる考えていった中で今思うのは、技術を正確に習得すること。

結局、正確でなければ治療効果も評価精度も期待できないということになる。


この「正確さ」。難しいなぁと常日頃思っているが、どうして難しいと思ってしまうのだろう。

大体のことは、思ってるよりなんとなく理解している。しかもなんとなくの精度って人によっても違う。

わかりやすいところだと、誕生日は日時がわかっても、四柱推命だと生まれた時間まで正確にわからないと、正確にはならない。

 

徒手療法において、「正確」がなぜ難しいかといえば、色々な感覚を統合しなければならないからだと思う。

例えば、ストレッチをするにしても、まず筋肉の起始停止を頭で覚えておかないといけないし、それを人体のどこであるかを、視覚、触覚で認識し、さらに動きとしてどのように動かすかを、筋肉の機能を頭で記憶しておかなければならないと同時に、動かす方向、手や身体の動かし方などなどを感覚を統合して行う。

それは曖昧でもできるが、正確に100点に近付けていこうと思うととても色んな要素が細かく必要になってくる。


書けば書くほど、自分が未熟だなと痛感してくるな汗

これと同じように、僕自身も技術も、知識、世の中のことも曖昧にしか理解出ていない。

そこを変えるには、(自分の状況、正確、行動パターンなど)自分自身を正確に地道に理解していかないといけないのかな。


それが技術を正確に理解していく一番近道のような気がしている。