ロンドンの、船上の鍼灸師の日記

2012年から客船で鍼師として働いていましたが、2017年からロンドンで治療家として働いています。治療のこと、クルーズのこと。色々綴っていこうと思います。ウェブサイトはこちら。https://www.junjapaneseacupunctureandshiatsuclinic.com/

症例報告〜生理周期に関係した腰痛〜

私は経絡の流れなどをベースとしたものではなく、患者さんの動きや癖、構造などを分析して症状を取り除く「整動鍼」というやり方をベースに治療をしています。

 

症例報告を挙げますと、


50代女性 会社員

主訴: 右側の腰痛

 

排卵期から生理中にかけて腰が痛くなるのがずっと続いていて、特に屈んで顔を洗う時などに痛みがでる。片手を壁につけながら必死に顔を洗っているとのこと。患部及びその周囲はとても固く、板が入っているようであった。

 

周囲を緩めていく上できつい刺激は痛みを悪化させると考え、違う場所からアプローチしていくことにする。改めて痛みが出る前に屈む動作をしてもらったところ、腰ではなく下肢全体の動きが悪いため腰痛を引き起こしていることがわかった。股関節、ひざ、足関節がうまく連携がとれるようにすねのツボに鍼でアプローチしたところ、痛みがほぼなくなり前屈がスムーズにできるようになる。

 

生理周期と痛みが絡むケースの場合、生理の活動が全身の活動に影響を及ぼすことがあります。今回は痛みを取り除くために来られましたが、逆に考えると、生理によって影響が及んだ箇所を修正していくことで、生理の状態改善していくこともあります。

 

生理と関連した痛みや、生理痛に悩みをお持ちの方がおられて、ロンドン在住の方がおられましたら、ぜひ一度ご相談ください。

 

 

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症例報告 〜肘から親指が腕を内側に回すと痛い〜

僕は経絡の流れなどをベースとしたものではなく、患者さんの動きや癖、姿勢などを分析して症状を取り除く「整動鍼」というやり方をベースに治療をしています。

 

症例を挙げますと、
30代男性 美容師

主訴: 腕の痛み(肘から親指にかけて)

 

職業柄、腕を酷使することもあり、親指の付け根あたりに腕を内側に回すと痛みがでる。肘の外側からその痛みがひろがり、親指の付け根にくる。

腕の回し方をみると背中からうまく指先に力が伝わっていないことがわかる。

そのため、デモンストレーションとして背骨の際にあるツボを押しながら腕を回してみてもらうと痛みがほぼ消失。そこに鍼をし、また、バランスが悪くなってしまった前腕の骨(橈骨と尺骨)の調整をすると、ほぼ痛みがなくなる。

このように腕に問題が起きている場合でも、全体の動きをみてみると、背中の問題が腕の痛みを作っている場合があります。

ちなみにこのアプローチはテニス肘やゴルフ肘、親指を動かすと痛いなど様々な痛みにも対応できます。複数回かかることもありますが、1度で痛みがほぼ消失することも少なくありません。

 

私の考えは、痛みは結果であり原因ではないというものです。このように身体の構造から答えを導いて痛みを取り除く方法も存在します。

ロンドン在住で色々なところへ行っても痛みが取れなかった方がおられましたら、ぜひ一度ご相談ください。

整動鍼との出会い

整動鍼との出会いはクルーズ船で働いていた時に遡ります。


クルーズの日程は7ー10日間であることが多く、その中で結果を出すことが求められます。
中国の鍼のスタイルは痛みが戻ってきたとしたら、痛みが戻る前にもう一度来いということで、毎日とか1日2回乗船中に来なさいというアドバイスをしていたと聞きます。
私はどうしてもそのような考え方に納得がいかず、1〜3回の施術でどうすれば症状を取り除けるか苦心していました。


そうした中で出会ったのが、「動きの不調和を調整して痛みを取り除く」という整動鍼でした。

船で出くわす症状の1つが「足の裏に痛みが出て歩けない」というものでした。
それまでは経絡の流れを考えたり、足の裏に直接鍼をしていました。ご存知のようの足の裏はとても痛く、刺す度に申し訳ない気持ちになるもイマイチ結果が出ないという状況だったのが、この整動鍼の視点から足をみることで結果が劇的に変わりました。


つまり、「下肢のバランスが崩れて動きに不調和が起きることで、足の裏に痛みが出てしまっている。」という解釈で足の裏の痛みを治療するわけです。

 

経絡で行き詰まっていた私にとってこの視点の変化は、僕にとって天動説が正しいとされていた世の中で地動説を唱えて常識をひっくり返したコペルニクスのようでした。
そうして整動鍼に出会い、今に至ります。

自営業へ向かって

先日、来年1月末をもって今のクリニックをやめるというか、正社員という立場から自営業者としての契約に切り替えるようにクリニックに伝えました。

 

子供ができると色々なことが変わります。住む場所、生活する費用などなど。

結婚して1人が2人になった時は住む場所が安くなったり食費が1人分の時より多く作れるのでトータルで安くなるなどがありましたが、そうはいきません。僕ら夫婦へ全くもって依存する存在ができたわけですから。

 

そうである場合、何かを変えない限り、お金という観点だけで考えれば自分たちが諸々を我慢する以外に方法はありません。だって、消費だけが増えるので。。。

お金は入る量が増えるか出ていく量が減らない限り貯まりません。減らすことの方が思いつきやすく実行しやすいですが、心が貧しくなってしまうことがあります。ならば、入る量を増やす方が楽しいなと僕は考えました。

 

日本に居た時に違和感を感じていたことの一つが、「年収300万(今は200万と言われてるとかどうとか)時代を生き抜くために」なんていうフレーズです。年収300万で生き抜こうという前提自体がくやしくないですか??

バブルの時に比べると成長率が低くなり、いけいけどんどん!な時代ではないからこそ、こういったフレーズが出てきたのかもしれません。でも、そこに引きづられて僕が生きていかないといけない時代まで生き方や価値観を規定されることにある種の憤りを感じます。

 

色々な準備をしていかないといけませんが、子供が本当にお金がかかる時までにある程度安定できるようにしないと。

 

知り合いの人がブログで書いていました。

 

『「お金持ちですね〜。」と言われると、恐縮な姿勢になる方。

「そんなことないです。」と否定する方。いらっしゃいます。

 でも、本当は胸張って「努力して、お金持ちになったんです。」と言い切っていいんですよ』

 ガーナの日記(https://heymykidz.hatenablog.com/entry/2019/07/07/022924)より。

 

 

そう言えるように、努力しよう。 

 

 

 

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 こんな感じで慢心しませんように笑

 

自己紹介、プロフィール、連絡先

名前: 吉村 潤

出身地:兵庫県神戸市

資格:鍼灸師あん摩マッサージ指圧師

趣味: 美術鑑賞及びコレクション、クライミング

連絡先: 2000yosimura@gmail.com

ウェブサイト:

https://2000yosimura.wixsite.comjunjapaneseclinic

 

プロフィール:

神戸大学国際文化学部卒業後、某大手重工業メーカーに入社。

上司との関係に悩み、鬱状態になっていた時に鍼灸と出会い鍼灸師になることを決意。

関西医療学園東洋医療学科を卒業後、クルーズ船に鍼師として乗船。Royal Caribbean, Silversea, Holland Americaのクルーズ船にて勤務し、カリブ海、ヨーロッパ、南米周遊、南極などを巡る。

2017年より縁あってロンドンで鍼師、あん摩マッサージ指圧師として働く。

 

治療(特に痛み)に対する考え:

痛みに対して僕がいつも考えているのは「痛みは結果であって原因ではない。」ということです。

原因を取り除かない限り、痛みはその場ではよくなってもまた痛くなってしまうことが多いです。そもそも、もし痛みのある場所が原因であれば、そこにアプローチさえすればよくなるはずです。そしてそうであれば、世の中に五万と治療法が存在する説明がつきません。

そうならないと言うことは、違うところに原因を求めなければならないのではないでしょうか。

 

 

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身体のバランスが変わっていく。身体の捻れが戻っていく過程を体験する。

2週間に一度来て頂いている患者さんがいます。

始めはお酒を飲むと頭痛が出て、何をやってもうまく取れないということで来院されました。

色々なことをストレスで片付けるのは簡単ですが、構造的にどうして頭痛が取れないのか色々考えてアプローチすることはできます。

というより、治療というのは「治療家の持っている尺度にその方の状態を当てはめてみる」ということだと思っています。映画の「メッセージ」で、言語学者が地球外生命体の発していた言葉を理解するように、患者さんから発せられている情報からどうして今苦しんでおられることが起きているのかを理解する作業が治療だと思っています。

 

右目の裏に頭痛が出るということで右側に注目していたら、構造を見ると頭から首にかけて捻れていて右→左へのラセン構造が身体の癖としてありました。(専門的に言うと、アナトミートレインでいうスパイラルラインにあたります。)ということで、左の脇へアプローチしたら頭痛が改善していきました。

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参照:アナトミートレイン

 

それが安定し始めると僕が患者さんの左腰が気になり始めました。話を伺っていると、左腰が不安定な感じがずっとしていて骨盤に腰をはめる癖があるとのこと。(これも先程出てきたスパイラルラインの影響によると考えています)そのために以前やっていたランニングもやらなくなっらしい。

ということで、左の下腹部へ内臓アプローチ及び左足が安定するように処置を施して今回に至ります。

 

今回は右の首裏が重いという訴え。コリと言うよりはむくみに近い状態でした。

左の腰はと言うと、施術後ずっとお腹が重だるかったらしい(2週間経った今でも少しある)のですが、だるさが軽減してくると今まで使えなかった部分が使えるようになってきたとのこと。例えば側屈した時に使えていなかった部分も曲げられるようになったり、呼吸した時に吸えてない部分があったことがわかったとか。

 色々見ていったところ、右の小胸筋という鎖骨の下にある筋肉が非常に硬くなっており、これが原因となり今回の症状を引き起こしたようです。

これはスパイラルラインの影響というよりは、スパイラルラインが元に戻る中で身体が根本から安定しようとするために生じたものと考えます。

*根本からの安定というのは、上半身で生じる癖や捻れが下半身に負荷のない範囲で伝わっていくことです。

 

次の来院時に身体のバランスはどうなっているのか。

楽しみです。

 

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治療メモ 治療の礎として

1) 人は見えていないところがある

右側の坐骨神経痛及び脛骨沿いに歩行時に痛み。右足親指にしびれ。

視覚を6方向で左右の目をそれぞれ確認(右の上横下、左の上横下)したところ、右目で左横が見えていない(指鼻試験)。つまり、左横を見るときに、右下肢全体に体重を乗せて観てしまう(視覚の補正)クセが今回の症状を作ったのか。(実際、右足首は外反して扁平足気味に)

その場合、いくら左右の脚の長さや右の足首のバランスを整えても元に戻ってしまう気がする。

もしくは、足首のバランスを整え、右足が踏み込めるようになれば平衡感覚が戻って、視覚補正も直るのか。

 

2) 鍼をするしないか、細い太いを使うかの基準。身体に隙間があるか

一年前に治療した時はあまり気にってもらってなかった患者さんを久しぶりに診たら次は指名してくださった。この違いは何なのか。

1年前に比べて、鍼をする人としない人の線引きが上手くなったのかもしれない。経験値を得ることで、この身体には僕の鍼のやり方が合う合わないの基準ができつつある。

それは「身体に鍼をする隙間があるかどうか。」だと思う。

 

どれだけここに鍼を打ちたいなと思っても、打てる隙間がなければ打たれる側は痛いだけ。それなら違うところに鍼をする事で、隙間を作りそこに後で鍼をする方がいい気がする。もしくは、手技で全体を緩めて鍼の隙間を作るのも手。

 

3) 身体の部分が求める層と全体が求める層

マッサージをしていると肩のこの部分は強い刺激で来てほしいとか身体から情報を受けそれに応えているなと思う。

その肩や腰などの部分部分からの圧の要求とは別に、身体全体として身体を包むこの層に刺激をして欲しいという要求を感じることがある。

その時には、最後に仰向きでその層へ刺激を固定させる。初めはなんだこれはと思う患者さんもいるが、徐々に落ち着いてその刺激を受け容れてくれることが多い。

また、こちらが患者さんからの強烈な眠気を受けている時はその方の脳が急激に休まろうとしているのでは。その後に一次呼吸が始まり落ち着くことが多い気がする。

 

 

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