ロンドンの、船上の鍼灸師の日記

2012年から客船で鍼師として働いていましたが、2017年からロンドンで治療家として働いています。治療のこと、クルーズのこと。色々綴っていこうと思います。ウェブサイトはこちら。https://www.junjapaneseacupunctureandshiatsuclinic.com/

日本に入国したい思い

12月中旬にイギリスから日本に3週間ほど一時帰国することにした。

世界中にいる日本人が今年の年末年始は数年ぶりに一時帰国していることだろう。一万五千人とかどうとかと聞いた。

そして、滞在先のホテルから色々な思いを持って、様々な方が文章を紡いでいる。実際僕も何人かの滞在記を読んだ。

迷ったけど、時間もあるし僕もその一人になることにした。


11月29日の昼間に急遽日本の外務省はそれまで3日だったホテル隔離を6日にした。オミクロン株の出現に合わせた措置とのこと。

僕の患者さんは隔離が伸びる前に帰るということで、予約していた治療の予約を急遽キャンセルして発表があったその日に戻られた方もいた。

 


ワクチン接種は済ませていたものの、ホテル隔離は娘がいるので仕方ないと思っていたが6日になるとは予想だにしていなかった。しかも10日で済むと思っていたのに計14日の隔離になるとは…

妻と娘と街中まで買い物に来ていたその月曜日に何件ものメールが外務省から届き、僕らはピカデリーサーカスの近くにある教会の外で家から持ってきた弁当を食べながらどうするかなぁと話し合った。

到着日は0日目とみなされるので、6日と言いながら実質1週間の滞在になる。妻は「娘が1週間も一歩も部屋の外から出ずにいる」ということが娘にとって可能なのかとても心配していた。

僕は4年間、船上の鍼灸師として働いてきたからなのか、そもそもそんなに娘の面倒をみてこなかったからなのか、単純で楽観的なだけなのか、1週間ぐらいなんとかなると思っていた。

とはいえ、予約してしまった航空券は3月末までしか無料で日付を変更できないし、妻もバイオリンのセミナーなどがあり今の時期を外すといけないとのこと。

なので、6日隔離より厳しくなったら旅行を取りやめるという結論に至った。昼間でも外にいたら身体が自然に震えてしまうくらい寒い日だった。


日本にいると想像しにくいとは思うが、日本はワクチン接種者に厳しい国だ。だから一歩引いた目線で見ると、ワクチン非接種者に優しい国とも言える。

オミクロン株出現の前は、イギリスからの帰国者の場合、

ワクチン接種者:ホテル隔離なし、10日自主隔離

ワクチン非接種者: 3日ホテル隔離、それに続いて11日間自主隔離の計14日間の隔離

つまり、4日間しか接種、非接種者との間には差がない。


一方、イギリスからフランスやドイツに行く場合、

ワクチン接種者: ワクチンパスポートを見せれば隔離なし

ワクチン非接種者: 14日間の自主隔離

となり、14日間もの開きがある。患者さんの中でワクチン非接種者だった方がおられたがそもそもフランスへ入国すらできなかった。


あと日本は子供に対しても非常に厳しい。大体の国では11歳以下などではワクチン未接種でも隔離などは必要ないが、日本は何歳でもワクチンを売ってない=ワクチン非接種者とカテゴライズされる。

*これはオミクロン株出現前の情報なので、今はどうなっているかわからない。フランスがイギリスに対して入国を厳しくしたらしいというニュースを流し聞きした。

 

ホテル隔離をしている人が自分たちの扱われ方について不満を述べたところ、わざわざ国のお金で隔離させてるんだからごちゃごちゃ言うんじゃないという意見が数多く出たと聞いた。僕が海外に出て行かず、日本に住み続けていたらきっと同じような気持ちになってるんだろうなと思ったりする。

その人たちの気持ちはわかる。感染者が日本の数十倍、数百倍もいる国からわざわざどうして来るんだ、また、その国のウイルスを持ち込ませないためにホテル隔離させてやってるのに文句を言うんじゃない。などなど。

 


そらそうだ。僕が南アフリカからイギリスに来た人に対して同じような気持ちを持つと思う。(ただ、イギリスではレッドリストかそうじゃないかに国を分けていて、今の南アフリカのような国はレッドリストの国とみなされ14日間ホテルで隔離となる。費用は個人が負担し、一人2000ポンド(ざっと30万円)と聞いた。)

確かに、ここまで面倒な思いをして帰りたいという理由は僕の「娘を親に見せたいというエゴ?」でしかない。

 


僕の妻は日本人だが両親もイギリスに住んでいて、いつでも娘と会うことができる。一方、僕の親は日本にいて今回娘に会うのが3度目となる。前回は生後5ヶ月だったので会話もできなかった。

娘は僕の親にとって初孫で、僕らにもう一人子供が生まれるかもわからないとなると、彼女が最初で最期の孫になるかもしれない。一方、2歳になった子供というのはかわいい。言葉を覚えて人間となっていくなかで、社会性なんてまだほとんどないから自分の感性だけで言葉を紡いでいる。


昨日も、夜中に彼女が起きた時に「飛行機もねんねしてるねー。」とつぶやいていたが、僕にとって飛行機は飛行機でしかなく寝るものじゃなかった。

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彼女にとってはまだ無機物と有機物との間には差がないんだなと夜中に起こされてだるいなぁと思いつつ、その表現にうっとりしてしまった。(その後に「子供もねんねしてるねー」とか言ってお前が言うなという一コマもありましたが汗)


こんな感性で生きている時期を父親としてはどうしても祖父母にみせてあげたいなという思いを持ってしまったのと、10月ぐらいにビデオ電話をしていた時に僕側の祖父母を祖父母として認識できてないことがあり、その焦りがどうしても帰国したいという想いに繋がった。

わざわざ帰ってくることはないんじゃないかと外野から言われるよなぁと思う一方、今見せないでいつ見せるんだという海外にいて身近には会えないからこそ思いを強くしてしまうところもある。それでまぁ、批判を受けることも覚悟しましたが帰ることにしました。


僕らは関西国際空港に戻って来たかったので、KLMを使ってロンドン→オランダ→大阪で帰ってくることにした。

ヒースロー空港は人で溢れていたにも関わらず、アムステルダムスキポール空港はカフェを閉鎖したりしてかなりこじんまりしているなぁと思ったら、関西国際空港についてびっくりした。

その日に着く便が画面に映し出されていたが、その数およそ7ー8便。1日にそんな数しかつかないとは…

逆に言うと、それぐらいの到着数でなければ、検査体制であったり、ホテル体制を整えることができないのかなという気もした。

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ただでさえ無機物な印象を受ける空港が人気がなくなることで、より宇宙にいる感じが増す。

「僕らは月に着いた」としてもこんな雰囲気なんじゃないかと妻と話したりした。空港について1組1組距離を置きながら、書類の提出やアプリのインストールの確認などを済ませていく。

厳戒態勢のその雰囲気はさながら僕らは宇宙人としてみなされてる感覚にすらなる。

僕らは実際海外にいて、日本人はまだ触れていないかもしれないウイルスを保菌しているかもしれないという点でいうと、宇宙人みたいな待遇を受けるのも仕方ない気もしますが…


東京は着陸してから5時間とか7時間とか隔離先のホテルまでかかると言われていたが、僕らは2時間半ほどで到着することができた。

関西に来る人が東京に比べて圧倒的に少ないのだろう。

7時間もかかると思うとゾッとする。


受付を済ませて案内されたのはシングルベッドが3台もある大きい部屋だった。

水やタオルが多めに準備されていて、ここで1週間部屋から出ることなく過ごすんだなと改めて思った。


僕らが小さい子供を連れていることへの配慮からか案内された部屋は飛行機の離着陸が見える部屋で、それは実際子供の暇つぶしにとてもとても助かった。

基本集中が続かないので、ことあるごとに飛行機が離着陸をしていたら、それをみた時に大興奮。工作などアクティビティの合間合間のブレークや、夜中に目が覚めて泣いている時に、飛行機は僕らの子守唄よりも彼女の気を逸らせた。ご飯の内容とかは他のブログを探せば出てくるだろうし特には記さないけど、日本のお弁当を食べてるなぁと思いながら食べた。

サラダが毎食出て、暖かいご飯も提供してもらったのはただただ頭が下がるばかりだ。

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今これを書いている今日、無事に6日目のテストが陰性だったので1週間ぶりに外の空気を吸えた。

この1週間何をやってたんだろうと振り返るけど、子供と工作したりとか背中の上に乗せてお馬さんごっこをした記憶ぐらいしかない。

毎日がのめっとしていてて、あっという間に1週間経ってしまった感じだ。


ある意味イギリスの1年近く続いたロックダウンよりも思い出深い1週間のホテル隔離でした。

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#一時帰国 #日本入国