ダンゴムシは汗をかくのか、どうして宇宙は暗いのか
夏休みに入り、普段聞いているNHKラジオ第一の「すっぴん」がお休みとなり、夏休み子供科学電話相談」が平日の午前中に放送されています。
虫、鳥、星などなど、毎日違うテーマで、子供からの電話相談を募り、そのジャンルに精通した専門家が答えるというものです。
初めはすっぴんがお休みということで、がっかりしていたのですが、この子供科学電話相談、とても面白い。
とても面白い!のですが、落ち込むことも多い。
なぜかといえば、質問の内容のような感性を失ってるなぁと思うからです。
タイトルにも書きましたが、「なぜダンゴムシは汗をかかないのですか?」や、「なぜ宇宙は暗いのですか?」など、かわいい質問だなぁと思うと同時に、私はそんなことに着目できるかなと思うと、できるか自信がありません。
瑞々しい感性。
大人に「瑞々しいですね。」とその人を評することってそんなにありません。円熟したなど、むしろ逆の評価を得られればよいと思われるからこそ、世界と新鮮に触れる子供たちを瑞々しいと言って、大人が我に帰るのかもしれません。
探せば新鮮なものはどこにでもある。
よく言われますが、最近見つけましたか?
私は治療の教科書を読み、解剖学の文献を調べる。
そこには私にとって想像を超えるメカニズムが働いていたりしてとても新鮮です。
例えば、鎖骨。
どうして人間に鎖骨はあるのか。
この骨、犬や猫などの四つ脚動物にはありません。
なぜでしょう。
それはその理由がないからです。
鎖骨は身体の真ん中にある胸骨という骨と肩甲骨を結んでいて、そうすることで、肩と体幹(=身体の真ん中)をつなぎ、腕を大きく動かせるようにしました。
骨の役割は末端と体幹をつなぎ、身体が動くことを可能にすることです。
イメージとしては体幹という重りがシーソーの片方に乗っていて、そのもう片方がそれによって動く。その連鎖で体幹かた指の先までつながり、動かすことができる。
これでわかりますか。。。?
筋肉が身体を動かしていると思われるかもしれませんが、筋肉がくっついているところは骨なので、そもそも骨がなければ筋肉は存在することができません。
もちろん、筋肉は骨を動かすことがその役割ですが、その役割は骨によって初めて存在できます。
筋肉は骨を動かしますが、骨によって支配されているとも言えるのです。
この理屈から言えば、人の場合、胸骨と肩甲骨をつなぐ必要があったため鎖骨というものが生まれ、また鎖骨を動かすための筋肉が発達したと言えます。
鎖骨は大きく腕を動かすのが役割と先ほど書きました。
犬や猫ももちろん私たちの腕にあたる前足を動かすことができます。(地面を掘ったりとか。)
でも、例えば何かを抱きかかえるという動作ができません。頭とお尻という上下の運動しかできない。
(鎖骨が頭とお尻という上下のラインに対し、左右についていることからも、その運動の方向がわかると思います。)
左右の運動の方向を獲得することで、初めてものを両手で掴むことができます。
リスにも鎖骨があり、だからこそ食べ物をああゆう風に掴むことができるわけです!かわいいあの仕草は鎖骨があってこそなのですね!!
だいぶ説明が長くなりましたが、こういう身体の仕組みを知ると、本当に解剖学は新鮮な発見の連続で、脳に瑞々しい感覚を呼び戻してくれます。
もちろん、なぜ鎖骨があるのかなど、疑問を持つことが重要ですが、その疑問を持つための意欲は患者さんの痛みや不調が教えてくれます。
どうしても改善しない症状。その理由を考えることが、私の解剖学への意欲をかき立てます。
ダンゴムシは汗をかくのか。
こんな疑問がいつまでも持てるような人間で入れたらなぁと思います。