英国の、船上の鍼灸師の日記 the diary of acupuncturist on Great Britain, cruise ship

2012年から客船で鍼師として働いていましたが、2015年はイギリスで働くために有機食品の会社で働き、2017年からロンドンで再び治療家として働いています。治療のこと、クルーズのこと、食べ物のこと。色々綴っていこうと思います。

経絡の存在を信じるか2

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「胃の調子を改善させて欲しい。」

 

勿論、その病態は多様です。胃潰瘍もあれば、逆流性食堂炎、胃下垂などなど。

 

それらの問題に対し、脈診や問診、触診などを用いて東洋医学的な診断を下し、使う経穴やその経穴に用いる手技(鍼を刺すという行為にも様々なバリエーションがあるためです)を決定します。

オーソドックスなものとして、足の脛にある胃経に足三里という経穴があります。(松尾芭蕉が行脚している時にお灸を据えていたと言う有名な経穴です)

足三里含め胃経は頭から足の指先まで流れているとされる経穴であり、この流れを触診して、反応のあるところに鍼をすると皆さんは思われるかもしれません。

しかし、背中には胃兪という膀胱経に属する経穴があり、膀胱経は胃を含め大腸、小腸など全ての臓器の名が冠された経穴があります。

 

「臓器自体に症状があるものは膀胱経の経穴に、臓器から派生して経絡に問題があるなら各々の経絡の経穴に施術しなさい」というのが、鍼灸の学校で教えられるような一般的な説明です。

 

しかし、その考えは本当に正しいのかと、臨床を重ねるうちに疑問に思うようになりました。(そもそも経絡に派生するとはどういう意味かもわからなくなってきました。)

船で働く前は、ある先生が1人で経営されている鍼灸院に弟子のような形で勤めていたので、その先生の考えにあまり疑問を持たず施術していました。

しかし、船において自分で考え、責任を持ち治療をすることになると、先生の考えをただ信じて治療し、自分としては効果を出せた感触を持っても、現実に結果が伴わないことが起きました。

 

こういう壁は、鍼灸業界含め医療一般で臨床に携わる先生は誰しもがぶつかるのではないでしょうか。

こういう問題がなく答えが見つかっているなら、すでにそのやり方が全世界で普及しているはずですから。

 

私の周りはそれに対して様々な反応を示しています。

そもそもそういった東洋医学的見方に興味がない者、東洋医学書物を読み込み答えを探していく者、なんとなくのまま施術する者などなど。

私の場合は新しい尺度を入れることで解決しようと思いました。

例えば、姿勢の分析です。

どうしたら足三里と胃兪を使い分けられるのか考えていたのですが、患者さんの姿勢を見ていて、胃をかがめるような姿勢をする人もいれば、していない人がいることに気づきました。

その違いに気づき、胃をかがめている人には胃兪をそうでない人には足三里をするのが効果的ではないかと思ったのです。

私はそのように、姿勢を確認して施術する経穴を判断していくようになりました。

この文章を書いて初めて気づきましたが、その私が気づいたことが、先ほど書いた「臓器自体に症状があるものは膀胱経の経穴に、臓器から派生して経絡に問題があるなら各々の経絡の経穴に施術しなさい。」という解釈の1つかもしれません。

 

しかし、私の考えも毎回正しいわけではなく、効果が出ない時もありました。

それは私の診立てが間違っているのか、経穴はあっていても施術が良くなかったのか、要因が多すぎてわかりません。

 

「経絡と呼べるかどうかわからないけど、内臓と手足につながりはあるが、12個に大別できるほど単純なものじゃない」

 

経絡を信じるかという問いに、私はこのような玉虫色の回答をしました。

自分自身がどんな意見を持っているのかしばらく考えていたのですが、やはりこの回答になりました。

何かを強く信じるかことはとても大切ですが、盲目になってしまうこともあります。

曖昧は柔軟ですが迷走しているともとれます。

 

どうすれば、自分はしなやかに強く太くなれるのか。

 

精進していくのみです。